AIコーディングエージェントと共に変わる開発スタイル
AIコーディングエージェントが開発の現場をどのように変えているのか、VS Code拡張型、エディター型、CLI型、自律型の4つのタイプを比較し、私自身の活用法を紹介します。
はじめに
近年のAIの進化は、ソフトウェア開発の現場に革命をもたらしています。 AIがコードを書き、開発者をサポートする「コーディングエージェント」が次々と登場し、私たちの働き方を根本から変えようとしています。
AIコーディングエージェントとは、ユーザーからの指示に基づいて自律的にコードを生成し、実行するAIのことです。 単純なコード補完から、複雑なプログラムの生成、バグの修正、リファクタリング、テストの作成まで、開発作業のあらゆる面でサポートしてくれます。
この記事では、様々なタイプのAIコーディングエージェントを整理し、私自身がどのようにこれらのツールを活用しているのか、そしてなぜCLI型のエージェントをメインに据えるようになったのかを、具体的な経験を交えてお話しします。
コーディングエージェントの4つのタイプ
現在、AIコーディングエージェントは、その機能や操作性から大きく4つのタイプに分類できます。
VS Code拡張型
エディタに統合され、コーディング中にリアルタイムで支援を提供してくれるタイプです。 開発の流れを妨げることなく、スムーズにサポートを受けられるのが特徴です。
- GitHub Copilot: 最も有名な例の一つ。当初はコード補完機能として始まりましたが、現在はエージェントモードも実装し、より高度な対話型開発支援を提供しています。
- Cline: Claude 3.5 Sonnet時代に開発されたVS Code拡張で、現在はClaude 4.0 Sonnetにも対応。ファイル操作、ターミナル実行、ブラウザ操作まで可能な高度な自律型エージェントとして、15分で700行のコードとテストを生成するほどの高速開発を実現します。
- Roo Code: Clineから分岐したプロジェクトで、以前はRoo Clineという名前でした。エディタ内で動作する自律型コーディングエージェント。Code、Architect、Debug、Askなど複数のモードを持ち、ファイル操作からターミナル実行まで幅広いタスクを自動化できます。
メリット: 導入が手軽で、コーディングのリズムを崩さずに利用できます。 デメリット: 大規模な変更や複雑な指示には向いていません。
エディター型
AIファーストで設計された独立型のコードエディタで、VS Codeをベースに独自のAI機能を統合したものです。 プロジェクト全体のコードを把握した上でコーディングすることができ、単なる補完に留まらず、より幅広いコード生成やリファクタリングを対話的に実行できます。
- Cursor: AIファーストで設計されたエディタ。コード生成からリファクタリング、デバッグまでを対話ベースで実行できます。
- Windsurf: Codeiumが開発したAIエディタ。コード生成、リファクタリング、デバッグ機能を統合しています。
メリット: 従来のエディタに慣れたユーザーにとって使いやすく、強力なAI機能を提供します。 デメリット: 既存のエディタからの移行コストや学習コストが必要です。
CLI型
コマンドラインインターフェース(CLI)を通じて、より対話的に、そして強力に開発をサポートするタイプです。 ターミナル上でAIと対話しながら、ファイル操作やコード生成、コマンド実行などを依頼できます。
- Claude Code: 私が現在メインで利用しているツールです。
- Gemini CLI: Googleが提供するAIを搭載したCLIツール。
- Codex CLI: OpenAIの技術を活用したツール。
メリット: 複雑なタスクやプロジェクト全体にまたがるような変更も、対話を通じて正確に指示できます。 デメリット: GUIに慣れていると、最初は少しとっつきにくいかもしれません。
自律型
与えられたタスクに対して、自律的に計画を立て、コーディングからデバッグまでをこなすエージェントです。 開発者の介入を最小限に抑え、一つのタスクを丸ごと任せることができます。
メリット: 大規模な機能開発やプロジェクトの立ち上げを自動化できる可能性があります。 デメリット: まだ発展途上の技術であり、現状では期待通りに動作しない場面も多いです。
私の開発スタイルはどのように変わったか
私自身、AIコーディングエージェントの旅はVS Code拡張型から始まりました。 GitHub Copilotを導入し、そのリアルタイムのコード補完能力に感動したのを覚えています。
しかし、開発を進める中で、より能動的にAIに働きかけたい場面が増えてきました。 「このコンポーネントをリファクタリングしてほしい」「テストケースを追加してほしい」といった、ある程度まとまった単位の作業を依頼するには、拡張機能だけでは力不足を感じるようになりました。
その後、エディター型のCursorやWindsurfも試しました。 しかし、タスクの完遂率はVS Code拡張型とあまり変わらず、また課金体系が月額固定制で、使い切れないことが多く、コストパフォーマンスの面で満足できませんでした。
そこで現在は、CLI型のコーディングエージェントに開発の主軸を移しています。
なぜCLI型なのか? Claude CodeとGemini CLIの活用
現在の私のワークフローの中心はClaude Code
です。
そして、補助的にGemini CLI
を利用しています。
この組み合わせに行き着いたのには、いくつかの明確な理由があります。
Claude Codeの魅力
- コストパフォーマンス:
Claude Max
のサブスクリプションに加入していれば、定額で利用できます。APIクレジットの消費量を気にすることなく、思考のパートナーとして常に隣にいてもらえるのは、精神的にも経済的にも大きなメリットです。 - 並列実行: 複数のターミナルで
Claude Code
を同時に起動し、それぞれ別の作業を並行して進めることができます。例えば、片方で新機能の実装を、もう片方でドキュメント作成やテストコード生成を依頼するといった使い方が可能で、開発効率が飛躍的に向上します。 - タスク完遂率の高さ: 私の体感では、Cline、Roo Code、Cursorと比較して、Claude Codeは指示したタスクを最後まで完遂する率が非常に高いです。複雑な要求でも途中でエラーを起こさず、確実に成果物を納品してくれる信頼性があります。ただし、これはClaude Maxに含まれるClaude Opus 4.0の寄与が大きいかもしれません。ClineやRoo CodeでもOpusを使用すれば、同様に完遂率が向上する可能性があります。
実践例:このブログシステムもAIとの共同作業
このAstroで構築されたブログシステム自体、そして今お読みいただいているこの記事も、そのほとんどをClaude Code
との対話を通じて作成しました。
要件を伝え、生成されたコードを確認・修正し、時には設計について議論しながら開発を進める。 これはもはや、単なる「ツール」ではなく「共同開発者」と呼ぶにふさわしい体験です。
そして、この「共同開発者」との開発において重要なのは、適切なマネジメントです。 AIエージェントへの指示の出し方、タスクの分割方法、成果物の検証プロセスなどをきちんと設計できれば、従来の何倍もの生産性を実現できる余地があります。 複数のエージェントを並列で動かし、それぞれに最適なタスクを割り振ることで、まるで優秀な開発チームを率いているかのような体験が可能になるのです。
まとめ:AIはプログラマーの仕事を奪うのではなく、変える
AIコーディングエージェント、特にCLI型のエージェントとの対話による開発は、もはや未来の夢物語ではありません。 すでに非常に実用的な段階にあり、開発者の生産性を劇的に向上させる力を持っています。
- VS Code拡張型から始め、AIとの協業に慣れる。
- エディター型も選択肢の一つだが、コストパフォーマンスを考慮して選ぶ。
- より複雑なタスクはCLI型に任せ、開発のパートナーとする。
- 自律型の進化にも注目し、未来の働き方に備える。
これらのツールを使いこなすことで、プログラマーは単純なコーディング作業から解放され、より創造的で本質的な問題解決に集中できるようになるでしょう。
私は、AIコーディングエージェントがプログラマーの仕事を奪うのではなく、その役割を大きく変え、ソフトウェア開発のあり方を次のステージへと引き上げてくれると確信しています。
そして将来的には、自律型エージェントが支配的になると予想しています。 プロジェクト全体を理解し、設計から実装、テスト、デプロイまでを一貫して行えるAIが登場すれば、プログラマーは本当の意味で「ソフトウェアアーキテクト」として、より高次元の意思決定に専念できるようになるでしょう。